2010年06月25日

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論文選集 珪酸塩融体の構造とスラグの物理化学

B5版 180ページ 定価16,800円(税込・送料別) 別途送料1,050円
2010年6月25日 第1版第1刷発行
編著者 巻野勇喜雄
発行 株式会社ティー・アイ・シー
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著者が少壮の研究者であった1970年代は日本がまさに高度成長期にあり、鉄鋼関連産業がその隆盛を支えていた時代であった。当時の鉄鋼産業における研究レベルはあらゆる方面で世界をリードしつつあり、本書に関連するスラグの物理化学でも多くの優れた研究者を輩出していた。したがって、今日に至るまでにスラグの物理化学に関する専門書が多数出版されている。
スラグとは金属精錬において生じる上澄みの無機物質であり、そのために容滓という用語が当てられている。鉄鋼精錬におけるスラグの主成分は珪酸塩を主とする無機酸化物である。鉄鋼精錬におけるスラグは粗鋼の種々の特性を高める非常に重要な役割を担っている。純度の高い粗鋼を精錬するにはスラグの物理化学的性質を制御することが重要で、例えば粗鋼中の酸素、硫黄、燐などの不純物元素を有効に低減・除去できる。
一つの産業が隆盛する時代にはそれに関連する学問体系が発展し、スラグに関しても例外ではなく。スラグの基本成分である珪酸塩融体の構造論が著しく発展した。珪酸塩融体の構造論に関する優れた成書が数多く認められる。しかしながら、珪酸塩融体の構造論は統計熱力学や高分子溶液論などをベースにしたアプローチが主流を占めるため、著者の知る限りでは数式の導出などを丁寧に取扱った書は見当たらない。著者が本書を編集する意図はここにある。したがって、本書の内容は数学的表現が多く占めているが、物理的意味を加味しながら、出来るだけ数式の導出・展開が容易に理解できるように配慮した。とくに、統計熱力学や高分子溶液論による珪酸塩構造に関する章は、著者がスラグ構造論に傾倒した青春の息の痕であるため、誤解・曲解があるかも知れない。したがって、読者とりわけ少壮気鋭の研究者からの指摘があれば幸甚である。また、統計力学的手法は規則-不規則変態など結晶固体の材料物性などの物理・化学的集団現象に関連させることができるので、本書が珪酸塩融体論以外の分野でも役立つものと確信している。さらに統計力学的手法の工学的課題への応用を意図する研究者に対して一助となれば、著者にとって尚一層の幸甚である。
大阪大学接合科学研究所 巻野勇喜雄

序章 はじめに
第1章 イオン論と珪酸塩融体の構造
 第1節  理想イオン融体
 第2節  理想イオン融体における原子価の効果
 第3節  複合陰イオンを含む融体とイオン論
  1.3.1 平衡定数の線型性と活量係数
  1.3.2 鉄鋼精錬におけるイオン論の応用
第2章 自由酸素イオン濃度と複合珪酸イオン
 第1節  ToopとSamisの取り扱い
 第2節  KapoorとFrohbergの理論
 第3節  自由酸素イオンの活量の決定
 第4節  複合珪酸イオン種の決定
第3章 高分子縮合理論の珪酸融体への適用
 第1節  直鎖モデルによる珪酸塩構造の解析
 第2節  側鎖モデルによる珪酸塩構造の解析
第4章 統計熱力学的取扱いによる珪酸塩融体の構造論Ⅰ
 第1節  統計熱力学の準備・・・正則溶液の統計熱力学
  4.1.1 正則性の定義
  4.1.2 正則溶液の第0次近似
  4.1.3 第0次近似における自由エネルギーと全エネルギー
  4.1.4 第0次近似における分圧と活量係数
  4.1.5 Combinatory formula
4.1.6 第一次近似(準化学的近似)による自由エネルギーと化学ポテンシャル
 第2節  準化学的近似による珪酸塩融体の構造研究
  4.2.1 横川・丹羽によるアプローチ
  4.2.2 セル間相互作用を考慮したアプローチ
第5章 統計熱力学的取扱いによる珪酸塩融体の構造論Ⅱ
 第1節  無熱溶液モデルによる統計熱力学
  5.1.1 パラメーターαと絶対活量および自由エネルギーとの関係
  5.1.2 Combinatory formula
  5.1.3 2量体
  5.1.4 開鎖r量体
  5.1.5 熱力学的性質
  5.1.6 多成分高分子液体
 第2節  無熱溶液モデルによる珪酸塩融体の構造研究
  5.2.1 KapoorとFrohbergによるアプローチ
  5.2.2 WSMモデルによる珪酸塩融体の熱力学的性質-Gaskellによるアプローチ
  5.2.3 LinとPeltonによる2元系珪酸塩の構造モデル
第6章 珪酸塩融体の塩基度
 第1節  塩基度の歴史的経緯
 第2節  分極率と分子屈折
 第3節  イオン屈折と非晶質珪酸塩中の3種類の酸素イオン分布
 第4節  イオン屈折に基づく塩基度-屈折塩基度
 第5節  光学的塩基度
  6.5.1 光学的塩基度の定義と物理的内容
  6.5.2 理論的光学塩基度
  6.5.3 製鉄スラグへの応用
 第6節  塩基度表示の多様性
あとがき

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